東京高等裁判所 平成8年(ネ)5370号 判決 1997年9月17日
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は、控訴人の負担とする。
理由
一 当裁判所も、被控訴人の本件請求は理由があり、認容すべきものと判断する。
1 被控訴人が、本件事故を引き起こし、控訴人に対し、本件事故により生じた人的損害については自動車損害賠償保障法三条に基づいて、物的損害については民法七〇九条に基づいてそれぞれ賠償をする責任を負担したことは、当事者間に争いがない。
2 本件損害賠償請求に関する主張について
本件債務に対応する控訴人の本件損害賠償請求に関する主張は、当審における第二回口頭弁論期日(平成九年四月二三日)において初めて主張されるに至ったものであるところ、《証拠略》によると、被控訴人は、平成四年三月二七日、浦和地方裁判所に本件訴訟を提起し、控訴人は、同年五月九日、本件訴訟代理人に本件訴訟の追行を委任し、同代理人は、原審においては、損害賠償請求について訴えを東京地方裁判所に提起する予定であるから、本件訴訟を取り下げてほしい等と申し述べ、右訴えの提起を待つため、弁論期日が追って指定とされた経緯があり、また、平成六年一一月ころには、本件事故により休業損害、通院交通費、慰謝料、車両破損による損害等合計一一〇六万五〇三八円の損害を被ったとして、被控訴人に対し自動車損害賠償保障法三条及び民法七〇九条に基づいて右損害の賠償を求める旨の訴状を作成したことが認められる。したがって、控訴人は、原審において本件損害賠償請求に関する主張を提出することができたものと認められ、それが困難であったことを窺わせる事情も存しない。そうすると、本件損害賠償請求に関する主張の提出が当審における第二回口頭弁論期日まで遅れたことは、控訴人の故意又は重大な過失によるものということができる。したがって、控訴人の本件損害賠償請求に関する主張は、民事訴訟法一三九条一項の規定により、これを却下する。
3 そうすると、本件債務の存在については、控訴人からの主張立証がないことに帰するから、被控訴人の本件請求は、理由がある。
二 よって、当裁判所の右判断と結論を同じくする原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 星野雅紀 裁判官 杉原則彦)